とと姉ちゃん べっぴんさん ひよっこ 半分、青い。 まんぷく スカーレット
これまでに見たNHKの朝ドラ作品
(とんでいる作品は途中リタイアしたもの)
最も好きな朝ドラ「ひよっこ」
リアルタイム放送は、朝の回を1人で見てから出社し、帰宅して録画を夫と一緒に見た
そして再放送もリアルタイムは1人で見て、帰宅した夫と一緒に録画を見た
すなわち、1話につき合計4回見た事になるが、その度に笑ったり怒ったり、時には鼻水が出るほど泣いた
そのくらい好きなドラマ
「ひよっこ」について語ります(※個人的見解です)
★「ひよっこ」が好きな理由
①主人公の谷田部みね子がかわいい
②みね子と家族の関係性に憧れる
③出てくる女性陣がみんな可愛い
④向島電機でみね子が出会う子達との仲
⑤あかね荘のみんながとにかくあたたかい
⑥みね子の働く洋食店すずふり亭の主人、鈴子さんの愛ある言葉の数々に救われる
⑦みね子の叔父宗男さんと、すずふり亭のコック元治さんのかけあいがおもしろい
⑧突如えげつないほどの現実が現れる
⑨辛い事があっても基本筋はとてもあたたかく、最後は登場人物たち皆が救われる
★さらに深く掘り下げる
①→この作品の主人公みね子は、常に自分の気持ちよりも相手がどう思うかを考え行動する心優しく「出来た」人
上京後、初めて勤めた会社で出会う愛子さんや、その後勤めるすずふり亭で出会うヒデに「自分よりも周りのことを考えてしまうところがある」という言葉をもらうほどのみね子が、話が進むにつれていい意味で少しずつ変わっていく様も見どころの一つ
また、成長していく過程で悩み苦しみながらもひたむきに前に進んでいく彼女からは、嫌味やいやらしさといったネガティブな要素はまるで感じられない
それは、いついかなる時もみね子の根底にある心優しさが失われないからではないかと思った
②→主人公の谷田部みね子と母 美代子が、お互いに信頼しあい、感謝しあい、理解しあっていて、いつもお互いを思いやり助け合う、そんな関係が羨ましい
祖父の茂もあの頃の男性には珍しく、家族のすることにああだこうだ口出しせず、少し離れたところからあたたかく見守り、家族の意向を尊重する
「こんな人いるぅ?」と思ってしまうほど
みね子の優しさは、このあたたかい家族から惜しみない愛情を注がれた事によって育まれたのだろうと思う
また、みね子と家族との暖かい関係性は、ドラマ中盤に出てくるエピソードをより深い闇として引き立たせてもいる
③みね子の幼なじみの時子や、乙女寮寮長の愛子さん、あかね荘で出会うOL早苗さん、すずふり亭で出会う高子さんなどなど、ひよっこには可愛らしくて魅力あふれる女性が数多く登場する
④みね子が上京して就職した向島電機にある乙女寮で出会う先輩達、幸子、裕子、澄子、豊子と年が近い事もあり幼なじみの時子とともに親しくなる
工場での仕事が上手くできず、みね子が悩んだ時も励ましてもらったり、休みの日にみんなで遊びに出かけたりと交流を深めていく
向島電機が倒産してしまい乙女寮の子達とも離れ離れになるが、その後も文通などで連絡を取り合って、寮の名の通り「乙女」のような関係が途絶えることはない
それぞれを取り巻く環境が変わっても仲良くい続けられるところは羨ましい
⑤乙女寮を出たみね子が暮らす「あかね荘」には、大手製薬会社の息子で大学に通う純一郎、OLの早苗さん、マンガ家デビューを目指す2人組つぼ田つぼ助といった、個性的な面々が住んでいる
また、アパートの管理人の富さんもなかなか濃いキャラながら、ユーモアと食欲と愛にあふれ、あかね荘に暮らす住人を管理人室から見守っている
みね子はここで暮らす中で、純一郎に恋をしたり、つぼ田つぼ助に勝手にマンガの題材にされたり、早苗さんにたくさん助けられたり、幼なじみの時子と暮らす事になったりしながら、東京生活に少しずつ馴染んでいく
あかね荘に暮らす人達とみね子の交流は「the 昭和」おもしろおかしくてあたたかく、それぞれの暮らしを生きながらも隣近所の人達と関わり合い励まし助け合う
いろいろな意味で内にこもりがちになった今の日本に漂う気味悪さというものは微塵も感じられない「あたたかさ」がある
⑤こんなに便利な時代を生きる私などには計り知る事などできないほどの苦労をしてきただろう、すずふり亭の店主すず子さん
彼女は「愛」と「潔さ」の人だと思う
とにかく周りの人を愛する懐の広さ
従業員を束ねる店主として、従業員を心から信頼し彼らが決める事を尊重する潔さは見ていて清々しい
また、彼女の愛情はすずふり亭の従業員だけではなく、近隣のお店やあかね荘に暮らす人達をも包みながらも、決しておせっかいではない絶妙な距離感で接する
こんな人が身近にいたらいいなぁと思いながら見ていた
⑦宗男と元治はそれぞれ、お調子者という共通項があり、2人のやりとりがドラマに訪れる酷な現実を「ユーモア」という作用によってやわらげる効果を発揮している
この2人が絡むシーンは何度見ても笑える
⑧こんなにあたたかいドラマなのに、このエピソードだけは辛すぎて涙は不可避
見ている者として、何でこんな事になったのか、何がいけなかったのかと、話を遡って考えてみたところでどうにもならなかった事がわかるだけでさらに落ち込む悲しむ
全体を通してあたたかい話だからこそ引き立つ影と言うべきか
しかし、その過酷な現実に向き合うことで、みね子はさらに成長する
⑨最後はこうでなくちゃねと言わんばかりの、実にひよっこらしい結末を迎えるのだが、ここでも涙は不可避
しかし、⑧とは違って⑧が悲しみの涙だとするならば、ここは「安堵」の涙かな
ひよっこは、みね子がカメラ目線で「がんばっぺ」と言って終わるのだが、これは明らかに視聴者に向けられた言葉だと思う
毎日頑張っても報われなかったり、もうとっくに頑張っていて何なら「そんなに頑張らなくてもいいよ」と言われたいくらいなのに、夢も希望もない現代を生きる視聴者が、夢も希望もあった頃が舞台のドラマに登場する人物達の言葉をなぜすんなり受け入れられるのだろうか?
答えはこの一言に限るのではないかと思う
「あたたかい」
このドラマにはとにかく、意地悪い人、他者を攻撃する人、他者を騙したり陥れようとする人は一切登場しない
途中登場する女優・せつ子は客観的に見ればなかなかの事をするのだが、彼女もまた誰かに意地悪をしようだとか陥れようとはしない
もし、せつ子が意地悪い人だったら、全て隠しておくだろう
そして、せつ子に対してみね子も、彼女を罵る事も出来ただろうにそれをしなかった
それどころか、せつ子が窮地に追い込まれた時、みね子は彼女を助けたのだ
おそらくみね子が、許しがたい事をしたせつ子を助けたのは、せつ子が悪意のある人間ではないと、彼女の行動によって気付かされたからではないかと思う
また、せつ子が、自分や家族に対してその時出来うる精一杯の対応をした事について、みね子はせつ子に感謝すらしていたのではなかろうか
みね子としては、彼女のした事に彼女なりの「あたたかさ」を感じたから、自分も彼女に「あたたかさ」を返そうと考えたのではないか、と思う
そもそも「ひよっこ」は、実在した人物に基づいて作られる事が多い朝ドラには珍しく、完全オリジナル脚本による作品
脚本家の岡田恵和さんが描く登場人物たちは皆、暖かい言葉を話す
時には厳しい事を言う人物もいるが、それも相手を思ってのこと
誰もが関わる人たちに対して配慮のできる人ばかりで、自分が辛い状況におかれた時でも、相手を批判したり攻撃したりなどしない
こんなに出来た人間は実際にはそれほどいないと分かっているが、個人的にそここそがこの作品の素晴らしいところだと思う
なぜなら「ひよっこ」はあくまでも作り話であり、現実には存在しない世界だから
思うようにお金を稼げず、豪雨や大地震などの天災に加え、謎のウイルスが発生し生活を脅かすという、あまりにも厳しい現実を生きなければならない日々で、せめても作り話くらいは救いであってほしいし、逃げ場であってほしい
ひよっこは、観た後にあたたかい気持ちになる作品であり、ストレスフルな暮らしですさんだ心をやんわりと包んでくれる、愛あふれる素敵なドラマだと思う
また、みね子はどこにでもいる「普通の女性」だからこそ、彼女に共感し励まし応援しているうちに、みね子というフィルターを通して自分もドラマの世界に入り込んでしまっているかのような錯覚に捉われる気さえしてくる
産業の発達によって日々の暮らしが便利になった一方で、かつてよりも人間関係が希薄になりどこか薄気味悪さも感じる現代で、このドラマから知ることや学ぶことはたくさんある
この先どんな時代が訪れようとも、人々が忘れてはいけないもの、失ってはならないものがたくさん詰めこまれた素晴らしい作品だと思う